ゲッターロボ-The beginning- 002(第1章)
2007-10-28


---第1章 早乙女と竜崎と---

「早乙女? ああ、アイツならココ1週間ずっと研究室に閉じ篭もりっ放しだよ?
 何でもヒミツの研究やってるんだって。マッドサイエンティスト予備軍だね、あれは。
 そうそう、知ってる? アイツ、この前ヤクザの事務所、ひとつ壊滅させたんだってよ。
 何でもウチの学生を麻薬漬けにして食い物にしてたヤクザを頭に来て追い詰めてたら、知らない内に組がひとつ潰れてたんだって。アイツらしいよなぁ〓」
 早乙女とは仲が良いらしいその院生は、立板に水の如く、聞いてもいない事までも嬉々としてべらべらと話し始めた。
 早乙女の居場所を訊ねただけのリッキーは、彼の長話に閉口した。
「あはは……」
 リッキーは親指を立てた拳を肩越しに後ろに向け、ちょいちょいと指を差す。
 リッキーの大きな身体の後ろに隠れて見えずにいた女子学生の姿を目に止めると、その院生はあわてて口をつぐんだ。
「あ。と、とにかく早乙女なら二階の研究室に居ると思うよ」
 バツが悪いのか、その院生は最後にそれだけ言うと逃げるようにその場を立ち去ってしまう。
「ま、まぁ早乙女も、それだけ正義感が強いってコトなんだからさ。いいコトじゃない」
 女性とは思えぬ程に大柄なリッキーが、後ろに居る女子学生に気を遣い、なだめるように話し掛ける。
「早乙女くん……また私の知らない所で無茶ばかりしてる」
「あ、あの、和子さん? そんなに怒らないで。ね?」
 普段は大人しい和子だが、こうなってしまうと手がつけられない。
 ただでさえ早乙女の無茶さ加減に、いつも心労が絶えないのだから。
「リッキー! あなた知ってたでしょ!!」
 知ってるも何も、早乙女が起こす騒動には、大抵リッキーも一枚咬んでいるのが定石だ。
 それが暴力沙汰となれば尚更である。
 男勝りどころかゴリラ並の体格と腕力のリッキーにとって、自分の力を思う存分振るえる場面を幾度と無く提供してくれる早乙女とは、最早腐れ縁と言って良い。
「いや、だからね。アタシもちゃんと早乙女の後ろを守ってあげてたし、アタシたちは怪我だって誰もしなかったんだから……」
 相手のヤクザは病院送りどころの騒ぎじゃ無かったけど……と言いそうになって、リッキーは言葉を飲み込んだ。
「そういう事を言ってるんじゃありません!!」
 和子の背後から、怒りのオーラがメラメラと立ち上った。
 この二人、無双力(むそう りつき)・通称リッキーと和子は親友である。
 大学生である彼女ら二人は、同じ敷地内に併設されている大学院に通う早乙女とはゼミで知り合い、仲良くなった。
 和子に一目惚れをした早乙女からの執拗なアプローチに折れ、和子と早乙女は時を待たずして付き合うようになり、リッキーと早乙女はお互いの気っ風の良さに触れ、気の置けない間柄になるのに時間は掛からなかった。
「あ、あの……それで、早乙女さんという方はどちらに?」
 二人がおかしな雰囲気になりそうなのを見かねたのか、白いワンピースの女性が声を掛けた。
 清楚な顔立ちの、長い黒髪が綺麗な色の白い女性である。
「あ、ご、ごめんなさい。はしたない所をお見せしちゃって。
 この上の研究室に居るみたいですから、御案内しますね」
 元々は早乙女を訊ねて来たこの女性を、二人で案内していたのだ。
 我に返った和子は、普段の大人しい丁寧な口調に戻っていた。
 和子の雷が落ちずに済んで、リッキーは胸を撫で下ろした。
 そう。和子の雷には、いくら天下無双のリッキーでも、勝てはしないのだから。

***

 見渡す限りの青空が、抜けるように高い。
 そんな秋晴れの爽やかな陽気に、まるで不釣り合いの罵声が校舎中に響き渡った。
「早乙女ってのは、どいつだ!!」
 チンピラヤクザ風の三人組が、ダミ声を張り上げながら木造校舎二階のとある研究室に怒鳴り込んだ。

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[ゲッターロボ・二次小説01]

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