ゲッターロボ-The beginning- 006(第1章)
2008-03-23


***

 早乙女たちは、パチンコ屋に群がる人だかりを見て唖然とした。
 青空組の詰所で、竜崎が数人を引き連れ、天地会の息の掛かったパチンコ屋に出向いたと聞いてここに来たのだ。
「イボマラのぉ、随分遅かったじゃねぇか」
 青空組の幹部らしい男が、竜作を見付け、声を掛けた。
「中畑ぁ! てめぇの仕業か!」
 スカした顔をする中畑と呼ばれた男の胸倉を、激昂した竜作が掴む。
「く、く、組長は事を荒立てるなと言ってたハズりゃ!
 そ、ソレをきさまは泥をるるような真似をしやがりるれぇ!!」
 あまりにも激昂し過ぎたのか、怒りをぶつけるべき台詞を、ちょっと咬んだ。
 例の如く、竜作の口の中から血が滲み出す。
「組長は甘いんだよ。これからは金と力の時代だってことが解っちゃいないんだ。
 オレに任せればホラ、ご覧の通り。天地会なんざワケねーだろーが」
 中畑は掴まれた胸倉から竜作の手を払い除ける。
 ついでに顔に飛んだ血まみれの唾も拭いさる。
 中畑という男、竜作のその癖にはもう慣れ切っているのだろう。
 顔に唾を飛ばされたというのに、冷静なものである。
「お前もいいかげん、オレの方に着け。
 これからはオレ達二人で青空組を大きくして行こうじゃないか」
「てめー! どの口がそんらころを言ひひゃがる!!」
 キスでもしてしまうのではないかというくらいに顔と顔を突き付け、ヌーという唸り声を出しながらお互いを睨み合う二人。
 両手を後ろに伸ばして向き合うその二人の絵面は、子供のケンカにしか見えない。
 青空組ってのは、こんなヤツしか居ないのだろうか。
 二人に早乙女のゲンコツが飛んだ。
「てめーらの都合はどーでもいいんだよ! あの中に竜崎が居るんだな?
 リッキー! 行くぞ!」
 大きく膨れ上がったタンコブを押さえてしゃがみ込む二人を尻目に、言うが早いか、早乙女とリッキーは店内に飛び込んだ。
「竜崎! 居るのか!!」

 二人が飛び込んだ店内は、まるで爆撃にでも合ったかのような状態だった。
 パチンコ台は全てが壊れ、倒され、無傷の物はひとつとして無い。
 床には割れたガラスの破片や、砕けたパチンコ台の部品、蒔かれたように散乱してるパチンコ玉で覆われている。
 新装開店の店とは到底思えない程の、惨たんたる有り様だ。
 竜崎を襲った用心棒達は全員、そんな廃材と化した機具に混じり折り重なって倒れていた。
「竜崎!」
 視界を遮る物が無くなり見通しの良くなった店内の中央には、グラサンの男の首を掴み、片手で高々と持ち上げている大男の姿があった。
 竜崎である。
 竜崎は無表情のまま、早乙女を見た。
「……なんだ。早乙女か」
 早乙女は竜崎の姿を見て驚いた。
 細身であった竜崎の身体はプロレスラーかと思える程にパンプアップされ、背丈も10センチは大柄になっているのだ。
 しかし、獣のようにも見える精悍な体格とは裏腹に、その顔色は死人のように土気色で、覇気という物がまったく感じられない。
 たったひと月で、人はこんなにも変わってしまえるものなのだろうか?
 別人のような竜崎の変化に、早乙女には同一人物である事すら疑わしく思えた。
「お、おまえ……本当に竜崎か?」
 竜崎は無表情のまま答える。
「……ひどいなぁ、早乙女。俺に決まってるじゃないか」
 感情の欠落した、何とも無機質な声色。
 竜崎は、まるで軋んだ音を立てながら動く油の切れた機械のようにぎこちなく首を動かし、早乙女の方を向く。
 その目には、生気ある光りが宿ってはいなかった。
「す、すまん。何だか別人みたいだぞ? お前」
 竜崎の頬がピクリと動いた。
「なぁ、何があったんだ? 突然居なくなって、みんなお前の事心配してんだぞ。
 とりあえずそいつを降ろして、オレ達と一緒に帰ろうよ。な?」

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[ゲッターロボ・二次小説01]

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